マリーナ・ベイ・サーキット概説
F1で唯一のナイトレースであるシンガポールGPでは、他のストリート・サーキットと同様に、オーバーテイクのチャンスが少なくなる。しかしニコ・ロズベルグは昨年、自信と勢いがバランスよく組み合わさった場合には、シンガポールでのオーバーテイクも不可能ではないことを証明していた。またこのコースはドライバーにとって、最も環境が厳しく、身体的にもつらいものになるかもしれない。雨の可能性、高い湿度、さらには隣国インドネシアでの森林火災によって、煙霧が街を覆う可能性もある。23の低速コーナーがあることからダウンフォースも高く設定され、シーズンで最も厳しいレースが行われることになる。

技術面の解説
自動車力学面
平均ターン・アングルは、サーキットのコーナーを角度で表したものによって示される。平均ターン・アングルが高くなれば、サーキットがより鋭いコーナーで構成されていることを意味するため、アンダーステアがラップタイムに与える影響が大きくなる傾向にある。シンガポールの平均ターン・アングルは94°であり、これは選手権全体の平均を下回っている。このサーキットは、シンガポールの公道を縫うように入り組み、23のコーナーが設定されているためだ。クルマの安定性を高めることで、ドライバーはさらにウォールへ近づいていくことができる。

2008年のシンガポールでの、ストレートの終わりでのスピード(EOSスピード)は時速291kmであった。これは、シンガポールが2009年のカレンダーの中で 2番目にEOSスピードが低いことを意味しており、ダウンフォースと空気抵抗を最適化するために設定されるウイングのレベルを決定する際、指標の1 つとなる。またシンガポールでは、カレンダーの中で2番目に1周の平均速度が低くなる。

ピットレーンと給油戦略
ピットレーンの長さと形状は、最適な燃料戦略の決定に影響する。シンガポールのピットレーンで失う時間は約19.5秒であり、これは選手権の中でも13番目に損失の大きいピットレーンだ。標準的な5kmをシンガポールで走行するには、2.50kgの燃料を消費する。今シーズンの全サーキットで5kmを走行するための平均消費燃料は2.42kgであるため、シンガポールは3番目に燃料消費量が多いサーキットである。

セーフティカー
レース戦略を決定する際に、もう1つ重要な要素となるのが、セーフティカーの出動する可能性だ。これは、天候の変化、クルマの排除などの作業をする際にレースを続行できるだけの十分なランオフエリアがあるか、特にレーススタート時の1コーナーの入り口と出口などのサーキットのレイアウトが考慮される。初開催となった昨年のシンガポールGPでは、セーフティカーが2回出動していた。ストリート・サーキットであること、そしてランオフエリアが少ないことから、今年もセーフティカーが出動する可能性は高い。

気温、気圧、湿度
ブラジルGPのインテルラゴスに到着したドライバーが、グリップ不足とエンジンパワーの低下を訴えるのは、長年の伝統となっている。シーズン中のエンジンや空力のパフォーマンスの基本的なレベルを知っていても、シーズン終盤戦のために海水面より750m高い土地へ移動すると、空気が薄くなることにより、クルマのエンジンパワーや空力のパフォーマンス、また冷却の性能を奪うことになるのだ。この損失をパーセントで表すと2ケタ近くになることもあり、さらに他の影響もクルマのパフォーマンスに与える。

空気の薄さは気温を左右する要素の1つであり、気温は季節や、高度と密接に関連している気圧に大きな影響を受け、湿度からも多少の影響を受ける。もしレースが毎年同じ時期に開催されるならば、空気の薄さに大きな影響を与えるのは高度である。シンガポールは海抜0mに位置しており、平均気圧は1010mbarとなっている。そのため、サーキット周辺の大気が、エンジンのパワーへ大きな影響を与えることはない。

サム・マイケル(テクニカルディレクター)のシンガポール、コース解説
7コーナー
この手前で最高速が記録され、進入時の路面がバンピーになっている。そのため最大のオーバーテイクのチャンスになる。

13コーナー
ここでは、低速からのトラクションが重要になる。

18コーナー
ここからの連続コーナーでは、スムーズなラインで走る必要がある。

22、23コーナー
このコースで最速のコーナー。それでも時速200kmを下回る。

ドライバーのコメント
シンガポールGPについて
ニコ・ロズベルグ(以下、ロズベルグ):去年は最高の週末になったし、本当に楽しめたよ。雰囲気は素晴らしくて、ナイトレースもうまく機能していたからね。トラック自体も、走っていて楽しかったし、挑戦しがいのあるものだった。

中嶋一貴(以下、中嶋):イベント全体が素晴らしかったですし、1年の中でもお気に入りの1つです。サーキットはとても挑戦しがいのあるもので、景色も魅惑的です。まさにF1という感じですね。楽しめる場所ですよ。僕はレースの週末、あまり外出しないのですが、去年はいいお店で食事をできました。今年も同じように楽しめるといいですね。

イタリアGP後の過ごし方
中嶋:シンガポールと日本は2週連続開催なので、モンツァの翌週はファクトリーのシミュレーターで多くの時間を過ごしました。いつも通りのトレーニングを続けながら、家に帰ってからも必要なことをしていました。シンガポールへは日曜(20日)に到着する予定なので、グランプリの前に、丸々1週間は現地にいることになります。そうすることで気候や気温、湿度に慣れることができるんです。ヨーロッパ時間のままで生活することになりますが、遅くまで起きていることには困らなそうですね! 水曜(23日)にはパートナーであるランスタッドのイベントにも参加して、寿司(すし)を作る予定なんですよ!

ロズベルグ:モンツァのあとはモナコで数日過ごした後に、グローブのファクトリーへ行った。チームのみんなと会って、準備のためにシミュレーターで走ったよ。水曜にはAT&Tのイベントがあるから、日曜日にシンガポールへ行くんだ。イベントでは彼らのクライアントにも会って、メディア向けの仕事もこなすよ。

シンガポールの技術的な面について
中嶋:シンガポールでは、いろいろな異なるものに対処することになるので、かなり技術的な要求が高いんです。ナイトレースなので、いつもとは違う光にも慣れる必要があります。そして、ストリート・サーキットですから、週末が始まったときは路面がかなり滑りやすいですね。ランオフエリアが少なく、オーバーテイクのチャンスもあまりありません。それに路面がバンピーで、特にターン5の間はバンピーですね。気温と湿度が高くなるため、ドライバーにも、クルマにも非常に厳しいレースになります。低速コーナーが多いために、ダウンフォースは非常に大きくなるんですが、僕たちにとっては有利ですね。僕たちのクルマは、そういった種類のトラックに合っているんですよ。

ロズベルグ:シンガポールで厳しいのは、暑さとコーナーの数だよ。23もコーナーがあるから、休む暇なんてない。サーキットは厳しいけど、僕たちのクルマに向いているダウンフォースを多くするトラックだから、モンツァよりもいい結果を得られると期待している。

夜のドライビングについて
中嶋:照明の光に慣れて、バイザーをうまく合わせてしまえば、いつもと変わりませんよ。去年は、暗すぎるコーナーがいくつかありましたが、今年はきちんと解決できているはずです。

ロズベルグ:いつもより暗いから、全体的に視認性は少し悪くなる。でも、すぐに慣れてしまうし、照明はたくさんあるからね。雨が降ったら、かなり厳しくなると思うよ。去年つらかったことは、ヨーロッパ時間のままで生活していたから、あまり太陽を見られなかったことだね。